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在籍しながら残業代を請求する場合は、他の従業員にも残業代を支払っていない場合がほとんどであり、他の従業員も関心を持って見守っています。
法律上は支払わなければならないとしても、組合員のみに支払うことはできません。かといって、全ての社員に未払い残業代を支払っては中小企業であれば会社が倒産してしまうことがあります。
例えば以下のような事例がありました。
物流業のお客様の話です。ある社員一名が合同労組に加入して残業代を請求しました。
この社員の方は退職してから残業代を請求するのでは無く、在籍しながら残業代を請求しました。物流業で全く残業代を支払っいなかったため、その請求金額は膨大なものに上りました。
その会社の給与水準は非常に高く経営者としては、残業代込みで給料を支払っていたのでした。
組合員の方の年齢は高く、持病を抱えていたため (ただし休職を命じるまでには行きませんでした )少なくとも同じような給与水準の会社にはおそらく再就職できない状況にありました。
また、お子さんがまだ小さくて教育費がかかり、かつ多額の住宅ローンが残っているような状況でした。
この方の内心はわかりませんが、経済的に追い込まれるような状況にあったのではないかと思います。
そのため会社を退職せずに在籍しながら残業代を請求したのだと思います。
団体交渉は難航しました。
もちろんある程度は会社も支払うことは覚悟しているのですが、合同労組の求める金額との開きが大きく話はまとまらず、組合員の方は訴訟(労働審判ではない通常訴訟)を起こしました。
労働審判の場合は退職前提の話し合いに応じることを前提としていることが多く、会社側としても見通しが立つのですが、通常訴訟の場合は退職を前提にしていないことが多いものです。
訴訟では組合員の主張に反論しながら、組合員の代理人弁護士(合同労組の顧問弁護士である事が多いようです)に退職前提の話し合いが可能かどうか提案しました。
このような話し合いを進めながら、他の社員については、就業規則を変更し人件費の原資の中で残業代を手当などの形で支払う方式に変えました。
時給単価が大幅に下がり不利益変更にあたるため手当方式の導入、賃金の内訳の変更について同意書を取りました。
合同労組とも交渉しましたが、同意することができませんでしたので、就業規則を変更することで対応しました。
就業規則変更に合理性がないとして争われる可能性は高かったですが、やむをえず実施しました。
紆余曲折ありましたが、訴訟の中の和解交渉を進め、会社が未払い残業代にある程度金額を上乗せしてその代わり退職をしてもらうことで合意する事ができました。
会社に在籍している社員が合同労組を通じて残業代を請求した場合は、請求してきた社員だけで無く他の社員についても対策を同時に進めるべきです。
使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
まずはお気軽にお電話やメールでご相談ください。
この記事の監修者:向井蘭弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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