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目次
業種 | 運送系 | |
従業員数 | 50名以上100名未満 | |
解決方法 | 通常訴訟(裁判上の和解) | |
結果 | 請求額 | 解決金 |
約1000万円 | 約300万円 |
従業員が事業場内で転倒しけがを負ったという申告があったため会社は従業員の求めに応じてこの従業員の申告通りに労災申請を行い、労働基準監督署から労災認定を受けました。
その後、この従業員は退職しましたが、退職後、会社に対し、会社の安全配慮義務が原因で転倒しけがを負ったと主張して代理人弁護士を通じて会社に対し損害賠償請求を行いました。
原告である元従業員は、会社が設置していた器具が正確に固定されていなかったことが原因で転倒したと主張していました。なお、転倒した瞬間を記録した防犯カメラの記録や目撃者はなく、実際にどのような過程で転倒したのかを示す客観的な証拠もない状況でした。
しかしながら、当日の気象条件や会社が設置していた器具の形状等を精査すると、会社が設置していた器具が正確に固定されていなかったことが原因で転倒したという原告の主張に不合理な点が出てきました。
そこで、こちらからは、当日の気象条件を示す気象庁の観測データを証拠提出した他、会社が設置していた器具と同種の器具の商品説明書等を証拠提出することによって、原告側が主張する事故態様に不自然な点があることを主張し、事故は原告側の過失により発生したものであることを主張しました。
また、会社の安全配慮義務違反が争われた過去の裁判例の中から、本件と事故状況が類似する事案を調査し、その裁判例に基づいて、仮に会社に安全配慮義務が認められる場合でも、原告側にも5割の過失が認められることを主張しました。
原告側からの請求は、逸失利益も含め1000万円近い金額でしたが、裁判官からは原告側に相応の過失が認められるとの心証が示され、この心証を前提に請求金額の3割程度の約300万円での解決となりました。
従業員から業務中にケガをしたという申告があった場合、会社が、本人の申告内容を精査せずにそのまま労災申請書に記載し事業主証明を行って労災申請を行ってしまうということはよくあります。
もっとも、その後、従業員本人から安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求を受けた段階になって、改めてどのような状況でどのような経緯でけがを負ったのかを精査すると、従業員が当時申告した状況やケガを負った経緯に不自然な点が出てくることも多々あります。
会社が従業員本人の申告内容どおりに労災申請書に事故態様等を記載し事業主証明を行ってしまうと、後にこの従業員から安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求され裁判になった場合に、実際の事故態様が従業員が主張する事故態様とは異なることを裁判所に認めてもらうことは非常に難しくなってしまいます。そのため、従業員から業務中にケガをしたという申告があった場合には、従業員が申告する事故態様に不合理な点がないか等を確認、精査したうえで労災申請書に事業主証明を行うことが非常に重要となります。
そのうえで、万が一、従業員本人の申告内容どおりに労災申請書に事故態様等を記載し事業主証明を行ってしまっていた場合でも、今回ご紹介した事案のように、従業員が主張する事故態様と客観的な状況との矛盾点を主張し、裁判官に、従業員が主張する事故態様が不自然であることを印象付けることがポイントとなります。
今回ご紹介した事案では、当日の気象条件や会社が設置していた器具の性質等を証拠に基づき客観的に示すことによって、裁判官に従業員が主張する事故態様が不自然であることを印象付けることができたことが、請求金額の約3割に相当する金額での和解に繋がったといえます。
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