労働審判の対象・審理期間

労働審判の対象・審理期間

労働審判の対象・審理期間

労働関係の争いには、①会社と労働者個人の争い(個別労使紛争)と、②会社と労働組合の争いがありますが、このうち①のみが対象となります。

また、賃金の引き上げ・労働時間短縮の要求など、将来の労働条件の形成にかかわるものについても労働審判の対象に入りません。

ちなみに、いわゆるセクハラ、パワハラなどを理由として損害賠償請求する場合も労働審判を利用することができます。東京地裁の裁判官の話では、最近はセクハラ・パワハラについての申立が増えているようです。

労働審判の期日、審理期間
労働審判は、原則として3回期日以内に審判を出すか、調停を成立させるなどして終了させなければならないとされています(労働審判法第15条2項)。

第4回期日を開催することもありますが、割合で言えば2%程度であり、ほとんどの労働審判は3回期日以内に終了することになります。
裁判所の統計では、平均74.9日で労働審判は終了しています。通常訴訟の平均審理期間が、9.8ヶ月(平成18年度)であることからすれば、その迅速性は極めて高いと言えます。裁判は時間がかかるとのイメージがありますが、労働審判に限ってはそのイメージはあたりません。

審理期間が短いと言うことは使用者側にとって有利に働くとは限りません。
特に中小企業の場合は、(元)従業員が労働審判を申し立てた場合、2~3週間で大慌てで準備をして弁護士を見つけ、何とか答弁書を作成します。顧問弁護士に事前に相談していればともかく、そうでない場合は弁護士に事案を説明するのも一苦労です。労働審判は、使用者の準備が不十分な状態で労働審判があっという間に終わることも多いのです。

また、労働審判のうち、7割が調停による和解で終了しています。これは驚くべき数字です。
労働審判委員会は第1回期日または遅くとも第2回期日までに労使のうちどちらが勝つのか負けるのか心証を形成しますので、今後の見込みを示唆するなどして、当事者を説得し(このまま続けても勝てる可能性は低いので今金銭で和解した方がよいなど)和解を成立させているものと思われます。

労働審判には専門的な知識が必要です。

使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
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この記事の監修者:向井蘭弁護士


護士 向井蘭(むかい らん)

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)

【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数

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