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労働審判は、迅速に個別労使紛争を解決する制度ですから、申立人の人数が多かったり、事案が複雑で3回の期日以内に労働審判を出すことが出来ない場合は、結論を出すことなく労働審判を終了させることになります(労働審判法24条)。
しかし、実際に労働審判法24条により手続きが終了する場合は少数にとどまっています。
未払い残業代問題は、労働時間の認定が難しいと言うことで、制度開始前は、労働審判法24条終了の対象とすることを予定していましたが、制度導入後は、とりあえず第1回期日を開いて、細かいことは気にせず、大まかに金額を裁判所が示して和解する例が多いようです。
残業代の裁判は1年以上時間がかかることもまれではなく、労働者が提訴をためらうことがありましたが、労働審判においては迅速に解決できる事例が増えたようです。
一方で、男女差別、労働組合差別、会社分割の無効を争う場合、就業規則不利益変更を争う場合などは、労働審判で扱わないようです。
男女差別、労働組合差別の場合は、仕事の内容が同じかどうか、能力が同じかどうかなど問題になり時間がかかりますので、とても3回以内の期日で終わるものではありません。
また、就業規則の不利益変更も、必要性、不利益の大小、労働組合との交渉など検討することがたくさんあり、事実認定も難しいため、とても3回以内の期日で終わるものではありません。
解雇は労働審判で扱われるのに適した紛争類型であると言われていますが、大人数の解雇を争う場合、労働組合があり、団体交渉を何度も開いている場合などは、3回以内の期日で終わることが難しいと判断されることもあると思います。
もっとも、複雑に思える事案であっても、裁判所は第1回期日を開いて、なるべく調停で解決できるよう努力しますので、労働審判になじまないと決め付けず、答弁書はきちんと書かなければなりません。
答弁書の作成が大変であっても、骨子だけでも会社の言い分をまとめる必要があります。
使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
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この記事の監修者:向井蘭弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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