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小売業C社(社員約100名)は、管理職複数名が会社を退職してから、合同労組に加入し残業代を請求してきました。
管理職複数名の他に会社に在籍している社員も合同労組に加入しました。
人員削減に恨みを持つ元社員が未払い残業代を請求することは珍しくありません。
いわゆるマクドナルド事件判決が出てから、名 ばかり管理職問題がクローズアップされ、管理職という肩書きの付いた方でも未払い残業代を請求するようになりました。
マクドナルド事件判決は、非常に使用者にとって厳しい内容でした。
従来多くの会社は、会社の指定する管理職を管理監督者として扱い(深夜残業を除く)未払い残業を支払ってきませんでしたが、その見直しが求められているといえます。
この事例3では、会社が容易に元管理職の方について管理監督 者にあたらないことを認め、未払い残業代を支払ってしまえば、現在の管理職の労務管理にも影響が出るでしょう。
このような場合も、これまでの未払い残業代の清算と今後の未払い残業代の抑制という2つの視点から物事を考える必要があります。
つまり、元管理職の方との間では、団体交渉を通じて元管理職は管理監督者であると主張し、訴訟も辞さないという姿勢を示します。
一方で、現在、会社で勤務している管理監 督者については、思い切って制度を改定します。
管理職の範囲はこれまでと同じ様に扱いながらも、固定残業代を支払わない管理職と固定残業代を支払う管理職に分類します。
これにより、現在会社に在籍している他の管理職が未払い残業代を請求するリスクを減らします。
このような方法は、団体交渉での会社主張と矛盾する可能性があり、難しいところですが、依頼者が今後同じ様な問題が起きなければよいと割り切れるであれば、このような方法を使い今後のトラブルを防止します。
基本的には上記「考え方」と同じ方法で進めました。
すなわち、団体交渉については、元管理職の方は管理監督者にあたると主張しながら、規定を改定し、一部の管理職には固定残業代を支払うことにしました。
人件費について、余裕がないので、固定残業代を支払うといっても、これまでの賃金の中で、残業代にみあうもの を手当として設けることとしました。
支給額は同じであっても、時給単価が事実上下がり不利益変更にあたるので、規定を改定すると共に 合意書をとりました。
現在在籍している管理職の方々と会社の労使関係は良好でしたので、規定の改定にあたりトラブルが起こることはありませんでした。
規定の改定、同意書作成については、顧問の社労士の先生が行いました。
団体交渉では、会社の対応が矛盾していると批判されまし たが、会社は元管理職が管理監督者に該当するという点については譲りませんでした(もちろん、具体的な事実にもとづいて管理監督者性について主張ました)。
労働組合は労基署に申告するなどして未払い残業代を請求することを行い続けましたが、最終的には一定の金額で、訴訟外で 和解することになりました。
使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
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この記事の監修者:向井蘭弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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