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懲戒解雇が原則です。
会社のお金を使い込んだ社員については、金額の多寡を問わず、懲戒解雇をしてかまいません。
裁判所も、会社のお金を使い込んだ社員については、懲戒解雇が相当であると判断しています。
しかし、下記のようなケースでは、訴訟等のトラブルになることがあるため、注意が必要です。
①退職金を、一切不支給とする場合
②お金を使い込んだか否かが書類などから必ずしも明確ではなく、従業員と会社に事実認定に争いがある場合
事前の対策としては、就業規則の整備につきます。
就業規則に懲戒事由が無ければ、そもそも懲戒処分はできません。間違いなく、解雇などの処分は無効となります。
懲戒事由に該当しなければ、懲戒処分をすることができません。抽象的な行為しか記載していない企業がほとんどですが、可能な限り具体的に列挙すべきです。
懲戒解雇の場合は、退職金を不支給とすることができると定めなければ、退職金を不支給とすることができません。規定がなければ、間違いなく退職金の不支給の処分は無効となります。
訴訟になれば、証拠がなければ勝てません。裁判所は、客観的な証拠を重視します。客観的な証拠とは、お金の使い込みがわかるような帳簿、書類をいいます。
特に、従業員が使い込みを否定する場合も多々あるので、このような証拠を確実にそろえておく必要があります。
本人以外の関係者の供述なども紙の記録に取っておく必要があります。
突然お金を使い込んだと見られる従業員が退職申し出をする場合があります。この場合は注意が必要です。
なぜなら、退職申し出から14日が経過すると従業員は退職し、懲戒処分ができなくなってしまうからです。
退職金を払わなければなりません。この場合は、時間との戦いです。14日以内に懲戒処分をしなければなりません。
ただし、「退職した場合も懲戒解雇事由に該当する行為があった場合には退職金を支給しない」との就業規則の規定があれば、退職しても支給しないことも許されます。
また、退職金を支払っても、「懲戒解雇該当事由があると判明した場合には、退職金の返還を求めることができる」との就業規則の規定があれば、支給しても返還を求めることができます。今のうちから、就業規則を整備しましょう。
会社のお金を使い込んだ従業員に退職金を支払うことは絶対にしたくない。でもトラブルにはしたくない。
そのような場合におすすめなのは、退職金を一部支払うことにして、その一部を被害金の弁償にあてるとして、従業員と合意することです。
従業員には退職金を実質支払わなくともよいし、トラブルも未然に防ぐことができます。
ただし、合意書の文言については注意してください。
文言に不備があると、トラブルが再燃しかねません。専門家に相談してください。
会社のお金を使い込んだと従業員に一銭も払いたくないという気持ちはわかりますが、懲戒解雇でも解雇予告手当を支払った方がよいです。
労基署に事前に申告して支払わなくてもすむ手続きがありますが、ほとんど労基署は認めません。
お金を使い込んだ従業員につけいる隙を与えないようにきちんと解雇予告手当を支払いましょう。
トラブルが起こってから取ることができる手段は限られます。
就業規則の整備も含め早めに専門家に相談してください。
問題社員対応の解決事例として、当事務所では以下のようなものがございます。
どのようにして弁護士と共に、問題社員対応に際して生じるトラブルを解決するのかのご参考にしてください。
また、労働問題で起きる代表的なトラブルや弁護士に相談すべき理由について解説した記事もございますので、ぜひご一読ください。
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この記事の監修者:向井蘭弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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