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退職勧奨を実施した際に、対象者が「退職勧奨には応じません」と断った場合、企業はどのような対応をとるべきでしょうか?
退職勧奨は適切に組み立て労働者が納得し応じる場合には双方円満に雇用関係を解消することができる手法である一方、やり方を間違えると退職勧奨自体が違法とされてしまう場合もあるため、退職勧奨の現場において必要な事項をおさえることは実務上極めて重要です。
本記事では、退職勧奨の実施にあたって企業側担当者が気を付けなければならないことについてわかりやすく解説します。
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目次
退職勧奨とは、会社が従業員に対して双方の合意によって雇用契約を終了させることの提案行為を指します。
退職勧奨はあくまでも合意形成に向けた提案であるため、従業員がこれに応じるかどうかは自由です。
この点が、会社が従業員の意向にかかわらず雇用契約を一方的に解消する意思表示である「解雇」とは異なる点です。
会社が事業を継続していく中で、様々な事情(不況、問題を繰り返す、求められる仕事をしない等)により、ときには従業員との雇用契約を解消する必要に迫られる場面に遭遇することがあります。
しかし、我が国において、解雇の有効性ハードルは高いとされており、また解雇の有効性を争う訴訟は長期化することも間々あります。
一方、適切に退職勧奨を実施し双方納得のうえ合意退職となった場合には、解雇有効性のハードルにさらされることはなく、また通常は紛争化することも避けられます。
このように、退職勧奨を適切に実施できれば、解雇に伴う紛争化のリスクを回避し双方円満に雇用契約を解消することができるのです。
ただし、退職勧奨の方法を間違えて安易に実施すると、かえって無用なトラブルに発展することもありますので注意しなければなりません。
退職勧奨を行いたくても拒否されてしまった、拒否されるかもしれないというお悩みを抱えている方はぜひ一度、この道40年の経験をもつ杜若経理法律事務所にご相談ください。
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退職勧奨を実施する理由としては様々な理由が考えられますが、特に多くみられるは次の理由です。
上記のように、勤務態度に問題があることは、退職勧奨の実施を検討する典型的なきっかけとなります。
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上記のように周囲とのトラブルが絶えないことも退職勧奨の理由となります。
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上記のような能力不足もまた、退職勧奨の理由となります。
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ローパフォーマー社員対応の進め方
経営上の理由から人員削減の必要がある際も、整理解雇を実施する前段階として退職勧奨を行うことがあります。
この場合には、個別の退職勧奨のほか、従業員全体に対して希望退職募集の告知を行うという方法ととる場合もあります。
退職勧奨は突然労働者に切り出しても奏功する可能性は低いです。
退職勧奨を行う理由にもよりますが、例えば能力不足や勤務態度に問題がある従業員の場合、対象労働者がそもそも自覚がないということが往々にしてみられます。
そのため、突然の退職勧奨ではなく、予め退職勧奨に至るまでの対象労働者とのコミュニケーションその他必要な準備を行うことが重要となります。
※退職勧奨の進め方についてはこちらをご覧ください。
まずは、漠然と退職勧奨を実施しようとするのではなく、退職勧奨を行う理由を整理する必要があります。
仮にその理由が勤務態度に問題があるということであれば、退職勧奨実施前にまずは注意指導の機会を設け、会社として現在の勤務態度に問題があると捉えているという認識及び改善の促しを端的に伝える必要があります。
また、能力不足を退職勧奨の理由とする場合には、やはりいきなり退職勧奨を実施するのではなく、まずは会社が期待している能力や成果と「今のあなたの現状」に乖離が生じていることを、書面等も用いながら説明し、改善に向けた具体的方法を指示することが重要です。
※ローパフォーマー(能力不足)社員の対応についてはこちらをご覧ください
これらの気づきの機会を与えることで、退職勧奨が「唐突になされた」等と捉えられ無用な反発が生じることを防ぐ効果が期待できます。
退職勧奨はあくまでも合意退職のお誘いであるため、対象従業員が応じなければ退職の効果は発生しません。
退職に応じてもらうための条件(退職金の上乗せ等)を検討のうえ、予め退職合意書ないし退職条件案を作成し、退職勧奨の場で渡せるよう準備をします。
退職勧奨のための面談を設定します。
面談では、あくまでも解雇ではなく退職勧奨であり応じるかどうかはあなた次第であることを伝えたうえ、退職勧奨を行う理由、合意退職に応じる場合の条件及び同条件を維持可能な期間(回答期限)を伝えます。
退職勧奨は大人数や長時間での実施、執拗な回数の実施をするとそれ自体が違法と評価される要素となりかねないため、2名程度で20分~30分程度に留め、端的に伝えることを心がけましょう。また、あとで言った言わないの齟齬が生じないよう録音も必ずとりましょう。
本人が退職勧奨に応じる場合には、退職合意書の取り交わしを行い、退職の効力を確定させます。
退職合意書には、退職日、退職事由、(支給がある場合には)上乗せ退職金等の支給、貸与品の返却条項、清算条項等を付すのが一般的です。
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従業員に退職勧奨する方法
従業員が退職勧奨に応じないのはどのような理由が考えられるでしょうか。
退職後同様の待遇を維持できるか不安であり退職勧奨には応じたくないというパターンです。
この場合、退職金の上乗せや、退職日を数ヶ月後等ある程度先の日付を設定し転職活動の余地を与える等の条件調整によって、応じる場合があります。
退職勧奨の理由に納得がいかないというパターンです。
退職勧奨のゴールは退職合意をしてもらうことであり、退職勧奨の理由自体への納得は必ずしも必要ではありません。
理由についての議論を大展開することなく、今退職勧奨に応じてくれる場合の条件、応じない場合に任せる業務体制等を伝え当人に選ばせるという対応が必要となります。
退職勧奨を実施する上司等と感情的な対立があり、「この人の提案には乗れない」というパターンです。
予め退職勧奨を実施する会社側の人選において、このような懸念が少ない方を選ぶことが肝要です。
「退職勧奨に応じません」と言われた際に、一番やってはいけない対応は「納得するまで説得を続ける」ことです。
ついつい退職勧奨に臨む担当者は「なんとか合意をしてもらいたい」という思いから説得を試みようとしてしまうことがありますが、本人が明確に退職勧奨を受けないことを述べているにも拘わらずこれを続けると、違法な退職勧奨となり慰謝料請求をなされる等のリスクにつながります。
本人が明確に退職勧奨を受けない旨を明示するのであれば、いったん退職勧奨は中断しましょう。
会社として退職勧奨に応じる場合の解決金(又は特別退職金)を用意している場合には、予め書面で条件(金額、支払日、その他退職合意にかかる条件)を明記のうえ交付できるようにしましょう。
このような準備を行うことで、仮に「退職勧奨に応じません」と述べられた場合にも「わかりました、それでは今日はこれで退職勧奨は打ち切ります。
今日ご用意していた退職条件は書面記載のとおりなので、もし気が変われば●月●日までにご連絡ください。」として、少なくとも条件を提示することは可能となります。
上記のとおり、本人が退職勧奨に応じない旨を明確に示しているにもかかわらず執拗に退職勧奨行為を繰り返すと、退職勧奨自体が違法となる危険が生じます。
もっとも、当初の退職勧奨時には存在しなかった事情(当事者の非違行為や不祥事、経営状態や業務の状況の変化、退職提示条件の大幅な上乗せなど)がある場合には、新たな退職勧奨として実施することも一定の合理性があり、必ずしも違法とはならない場合もあります。
再度の退職勧奨を行う場合には、このような新たな事情があるといえるのか、当初の退職勧奨から時期が近接しすぎていないかを十分検証のうえ実施の有無を判断する必要があります。
上記のとおり、退職勧奨は適切に行えば円満に雇用契約を解消するという効果が得られる一方、闇雲に実施すると退職合意を得られないどころかかえって無用な紛争を招いてしまうということにもなりかねません。
そのため、「対象者には退職勧奨をどのように切り出すべきか」「どのタイミングで切り出すべきか」「具体的にどのような準備をして臨むべきか」ということについては緻密に検討のうえ実施する必要があります。
使用者側労務問題を専門的に取り扱う杜若経営法律事務所では、退職勧奨に向けたアドバイス等も数多くの件数の対応実績があります。退職勧奨実施にあたり悩まれている経営者様は、是非お気軽にご相談ください。
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使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
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この記事の監修者:友永隆太弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 友永隆太 (ともなが りゅうた)
【プロフィール】
団体交渉、残業代請求、労働災害や解雇事件等の労働問題について、いずれも使用者側の代理人弁護士として対応にあたっている。主な著書は、「外国人労働者が関係する労組トラブル最前線」(ビジネスガイド2019年8月号・日本法令)、「法律家から学ぶ葬祭業界の「労務問題」」(月刊フューネラルビジネス連載2019年11月~2021年3月・綜合ユニコム)、「教養としての「労働法」入門」(日本実業出版)、「職場のアウティングをめぐる問題と法的責任・社内整備」(ビジネスガイド2021年8月号・日本法令)、「介護事業所のカスハラ対策 書式と社労士実務」(SR第65号・日本法令)、「改訂版 就業規則の変更による労働条件不利益変更の手法と実務」(日本法令)などがある。年間セミナー登壇40回以上。
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