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以下に挙げる不正リベート、窃盗・横領、無断欠勤は、残念ながら、日系企業で多く見受けられる規律違反である。
これらは原則として即時解雇事由となる。
目次
中国では日本と異なり民間企業同士のリベートのやり取り等が商業賄賂として処罰されることがある。
商業賄賂は、日本の不正競争防止法に相当する「反不正当競争法」(第 8 条)等により行政罰(1万元~20万元の過料、違法所得の没収等)の対象とされる。
もっとも中国では、後に述べる通り、一定の職種の担当者は、会社の許可を得ず、不正リベートを受け取っていることがある。
中国にいる日系企業経営者も見て見ぬふりをしていることもあるが、不正リベートを受け取ることにより、不当な利益を個人的に得て、会社に損害を与えているわけであるから、見逃すべきではない。
不正リベートは、電話等の口頭のやりとりで現金の授受や物の直接のやりとりを通じて行われるため、不正リベートを証明する物的証拠が無い場合が多い。
そのため、即時解雇をして、労働仲裁や訴訟に発展した場合、関係者の供述や情況証拠のみを根拠に即時解雇の有効性を主張したとしても証明不十分であるとして即時解雇が無効になることが多い。
実務では、即時解雇の証拠が十分揃っているケースは少ない。そのため不正リベートを受け取った事実を証明するには取引先担当者の陳述書や従業員の陳述書などが証拠として提出されることが多い。
いずれにしても法的に「証人証言」として扱われるためには、証人尋問が求められる他、証人との利害関係も裁判の焦点として争われることがある。
また、不正リベートを受け取ったことが争点になった場合、その「証人証言」が唯一の証拠となることが多いので、裁判所も慎重な判断を行い、証人が出廷しなかった場合や会社と証人に利害関係があると言った理由で証拠として価値が認められないケースが多い。
不正が起こりやすい職種・職務は不動産開発担当者、資材購入担当者、管理職、営業担当者である。
典型的なものは、店舗の修理などにかかる経費を水増しして会社に請求し、設備会社から不正リベートとしてキックバックしてもらう、新店建築時に使用する原料を指定し、業者からキックバックをもらうなどである。
少し変わったものは、店舗のオープン遅延を会社に報告せず、会社が結果としてオープン遅延期間中の賃料を無駄に支払う場合である。
店舗のオープン遅延を報告しないということは、その間発生した無駄な家賃(本当は発生していない)が不正リベートとして担当者に回っていることがある。中国の不動産業界は、多額の金銭が動き、不正リベートが行われることの多い業界であるため、担当者も不正リベートの業界慣行に染まってしまうことがある。
このような事例が続くような場合は、担当替えを行い、他の担当者に担当させる必要がある。また、即時解雇を視野に入れながら退職勧奨のタイミングを図る必要がある。
不正リベートを受領することが一番起こりやすい部署である。
一方的に、資材購入担当者については、仕入先業者が取引機会を獲得するため、積極的に不正リベートを提供することが多いが、最終決定権を持つ悪質な購買担当者が仕入先業者に金品を要求することもある。
不正リベートではないが、社内の一定の権限を有する管理職が、その権限を利用して従業員から金品を受け取ることがある。
この金品の授受が、自分の利益を獲得するための不正なものか、それとも単なる儀礼的なものであるかということが裁判では焦点となる。日本ではなかなか見られない類型である。
商品やサービスを売る業務であるため、不正リベートを渡すことが多い。
しかし、本来自ら供給できる商品やサービスの供給を自前でせず、あえて代理店を通らせて商品やサービスの供給をするという問題がある。
これは、会社の取引機会をあえて代理店に渡し、代理店から不正リベートを受け取る疑いがあるものであるが、代理店からの証言を取りにくく責任を追及することも難しい。
実務では、この種の不正行為に対し、秘密情報の漏洩や規則制度違反などの不正リベートとは別の理由で対処することがある。
不正リベートの証拠収集はなかなか難しいが、方法が無いわけではない。
従業員(と思われる人間)からの匿名の手紙、電話、メールにより不正リベート授受の事実が発覚することがある。
もしくは、従業員が匿名ではなく、不正リベートの噂を報告してくることがある。
これらの情報は全く根拠も無いものから、直接証拠は無いが情況証拠から不正リベートが疑われるものまで玉石混交である。
特定の従業員を陥れるために、嘘の密告をする場合もあるので、注意が必要である。
取引業者からの密告がなされることがある。通常、取引業者は不正リベートを渡す側であり、取引業者から情報が漏れることはないはずであるが、たまに取引業者が不正リベートを密告することがある。
あまりにも多額の不正リベートを要求したり、業者をいじめるかのような取引条件を強要している場合に、耐え切れなくなり会社に通報することがある。
これも、担当者を陥れるために虚偽の密告をする可能性があるので、本当に不正リベートの事実があるのかは慎重に調査をする必要がある。
取引業者が協力して貰える場合は、録音・撮影などにより不正リベート授受の現場を押さえることができるが、多くの場合は報復を恐れ、録音・撮影などの協力は行わない。
専門家(例えば、弁護士、会計士など)に依頼し、社内の内部監査を実施する。
勿論、内部監査を実施したからといって必ず不正が発見されるとは限らない。
但し、内部監査は、不正の発生につながる内部統制の脆弱性の発見と改善を促し、不正への抑止力となり得る。
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この記事の監修者:向井蘭弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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