中国における雇い止め・無固定期間労働契約への転換について

労働審判の活用による局面打開

中国の雇用形態について

中国における日系企業において、例えば朝礼等で総経理(現地法人の社長)が「王さんは試用期間が終了して4月1日付で正社員になりました。」などと紹介をすることがある。

ここで言う「正社員」は日本と異なり、「無固定期間労働契約でフルタイム勤務を前提として、場合によっては退職金を受給できる従業員」ではない。中国でいう「正社員」は、無固定期間労働契約のみならず固定期間労働契約を締結している場合を含み、単に雇用契約期間中の試用期間が過ぎた従業員を指すことが多い。

そのため、「正社員」も日本で言う雇い止めにより退職することがあり、従業員によっては、雇用の安定のため、後に述べる労働契約法第14条2項にもとづいて無固定期間労働契約締結を強く望むことがある。

今後、中国経済が減速し続ければ、尚更この種の紛争が増えると思われる。

雇い止めについて

日本の場合は、労働契約法19条により、固定期間労働契約であっても、解雇権濫用法理が適用され雇い止め(契約不更新)が無効となることがある。

中国の場合は、後に述べる固定期間労働契約の無固定期間労働契約への転換が義務付けられる場合を除けば、雇い止めが無効とならず、解雇と異なり法的リスクは少ない。

そのため、企業としては、法的リスクの少ない固定期間労働契約をどのように活用するかが経営課題となる。

契約終了通知の予告期間について

問題社員に事前に契約終了通知を行なった後、問題社員が契約期間満了までに誠実に勤務しないケースが間々見受けられる。

期間満了間際にて契約終了通知を行なうことができれば、無用のトラブルを回避することができる。

中国では契約終了通知の予告期間について地域毎に規制が異なる。

「北京市労働契約規定」(2002年1月31日実施)第40条によれば、労働契約期間満了前、企業は30日前をもって労働契約終了又は更新の旨を書面にて労働者に告知しなければならず、協議を経て労働契約の終了又は更新の手続きを行うものとするとされている。

もっとも、上海市ではこの種の条例や規定は無く、特に事前の契約終了通知の予告期間の規制が無い。そのため、上海市では、雇用契約書に定めが無ければ、契約終了期間直前に終了通知を行うことができる。

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この記事の監修者:向井蘭弁護士


護士 向井蘭(むかい らん)

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)

【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数

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