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医療期間とは、従業員が業務外の原因で疾病・負傷し、業務を一時中止し治療を受ける期間であり、この期間内に会社が労働契約を一方的に解除・終了できない期間を指す。
病気休暇とは会社が就業規則等で業務外の原因により疾病・負傷し労務の提供が出来ない場合に認める休暇を指す。
中国では、日系企業のみならず中国内資企業、外資企業において、従業員がこの病気休暇・医療期間を濫用する事例が相次いでおり、企業経営者・人事担当者の頭を悩ませている。具体的には病気休暇・医療期間を濫用することで以下の弊害が発生する。
日本ではノーワーク・ノーペイの原則があり、業務上災害によらないいわゆる私傷病欠勤については原則として賃金が発生しない。健康保険組合等から傷病手当金が支給されることはあっても、会社が賃金を支払う法的義務はない。
しかし、中国の場合は、私傷病欠勤についてもノーワーク・ノーペイの原則は当てはまらず、法律で一定の賃金の支払いが義務付けられている。これらは、従業員の生活を保障するための施策であるが、病気休暇制度が濫用されれば、働かなくとも一定の賃金を得ることができるため、真面目に働いている他の従業員のやる気を無くさせることになる。
また、病気休暇の濫用事例は模倣されることが多く、同一企業内で、同じような病気休暇を取り、働かなくとも一定の賃金をもらおうとする従業員が続出してしまい、会社の秩序を乱す一因になっている。
医療期間中は労働契約を解除することができないため(労働契約法第42条3号)、企業が事前に解雇・雇い止め通知を行った後に、医師の診断を受けて診断書を提出し、病気休暇を取ってしまうのである。その後医療期間中は一定の賃金を受け取り続ける事例が多発している。
また、労働契約法第45条は「労働契約が期間満了する際に労働契約法第42条に定めるいずれかの事由がある場合、労働契約は相応する事由がなくなるまでに自動延長し終了するものとする。」と定めているため、病気休暇を取得できる場合は、雇用契約が自動延長されてしまう。この場合も医療期間中は一定の賃金を受け取ることができる。
では、上記の通り、病気休暇が解雇・雇い止めの対抗手段として用いられた場合は、会社に対抗手段はあるのだろうか。
多くの事例では、会社は、病気休暇を仮病とあると判断し、病気休暇を無断欠勤扱いし、即時解雇(日本の懲戒解雇)を強行し、労働仲裁・裁判などの法的紛争に至っている。
もっとも、診断名は「腰痛」「精神病」などの名称であることが多く、自覚症状のみであることをもって仮病であることの証明は極めて難しく、多くの裁判例では仮病であることを会社が証明することができず、裁判所は違法解雇であると判断している。
そのため、結果的に、従業員は病気休暇期間中の賃金を得ることのみならず、最高で二倍の経済補償金を得ることが出来てしまう。
また、実務では、労働者側の請求により経済補償金ではなく、労働契約関係の回復が要求されるケースもあり、結局、退職せず、従業員としての地位が回復してしまうこともある。
使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
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この記事の監修者:向井蘭弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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