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中国労働契約法の人員削減における特徴は労働局の関与があることである。
近年、中国経済の減速や物価の上昇などの原因で一般市民から政府に対する不満が増えている傾向にあり、社会安定化を維持することは地方政府にとって最重要課題の一つである。
そのため、大きな混乱を避けるため、地方政府(労働局)は企業の大規模な人員削減には積極的に関与するようになった。
労働契約法第41条には労働局に対して人員削減案を「報告」するとしか記載されていない。労働契約法第41条の「報告」は、法的には届出を行うことを指すので、法律上、労働局に会社が提出した人員削減案を審査し許可する権限はない(最終的に合法か違法かは裁判所で裁かれることになる)。
しかし、実務では、労働局は企業の人員削減に深く関与しておりその同意を得なければ、裁判で違法解除と判断されるリスクが高まる。事業所を存続させながら一部の人員削減を行う場合には、労働局は人員削減案の内容によっては同意をしないことがあり得る。
業績数値(人員削減の必要性)、経費削減策(人員削減を避けるための努力を行なったこと)などを書面にまとめて労働局に提出する必要がある。
一方、解散清算(労働契約法第44条)や労働契約法第40条第3号に基づき人員削減を行う際に、法的に労働局に「報告」する必要がない。ただし、特に解散清算の場合、全員解雇となるので、穏便に解決するため実務では現地労働局に事前に説明することがある。
工会は翻訳すれば「労働組合」という意味になるが、日本とは実務上の位置づけが異なる。工会は従業員の合法的な権益の保護を図ることがその責務であるが(工会法2条)、同時に、工会が企業の生産活動に協力すること(工会法7条)、企業の合法的な経営活動の支持(工会法38条)も重要な役割の一つである。
そのため、中国の工会は日本の労働組合とは異なり、企業側と従業員側の関係を調整し両者のコミュニケーションの橋渡しをする役割を果たすことになる。
人員削減の場合も、会社が工会に対して人員削減案について説明することや意見聴取を求めたり(労働契約法41条)、解雇の前に工会に通知すること(労働契約法43条)を求めている。会社に工会が存在する場合は、工会との協力関係が重要になる。
経済補償金とは、労働契約の終了または解除の場合に、企業が法定の条件および基準に従い、従業員の損失を補償するために従業員に支給する金員のことをいう。労働契約法が2008年に施行される前から存在している制度であり、中国で働く従業員は誰でも知っていると言っても過言ではない制度である。
一方で、中国には日本と異なりほとんどの会社に退職金制度はない。そのため、労働者は法定の経済補償金はもちろんのこと、それ以上の上乗せを求めてくることがある。
なお、会社解散の場合、経済補償金の計算方法は地方によって異なるため、注意が必要である。
例えば、会社解散の場合、上海においては、経済補償金を当該従業員の勤務年数によって計算するが、これに対して、北京、浙江省においては、経済補償金を当該従業員の通算勤務年数によるとは限らず、2008年以降からの勤続年数で計算することが多い。
使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
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この記事の監修者:向井蘭弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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