窃盗・横領

労働審判の活用による局面打開

業務上の窃盗・横領

日本でも業務上の窃盗・横領がなされることが多いが、中国の場合は、日本と業務上の窃盗・横領のスケールが異なる。

例えば、業績不振の理由が、実は工場内の組織的な大量の窃盗によるものであることが判明した事例もあった。

警備員から管理職まで共謀し、窃盗用のトラックをわざわざ手配し、深夜に日本人経営者がいない時に大量の資材を運び出し、専門業者に換金させていることもあった。

手口は巧妙であり、組織的であることもある。日本と同じような性善説では通らない厳しい現実がある。

過失によるミスと故意の区別が難しい

例えば、日本でもよくあるが、中国でも店舗のレジの現金を盗んでしまう従業員がいる。

故意にレジの現金を盗んだのであれば、少額でも即時解雇は可能である。しかし、実際は、「確かに自分がレジ担当の時に現金が無くなっているが、私が盗んだものではない」などの言い訳をされる可能性がある。

つまり、金銭紛失の事実は認めるが、これは自分が故意に行なったものではないと言い訳をする可能性があるのである。窃盗・横領については、意外と故意に行なったという証拠が無いことが多い。

そこで、過失によるミス(例えば特定の担当者がレジを担当していた場合に限って、複数回にわたり現金が無くなる)については、即時解雇が可能な従業員の著しい職務怠慢行為により会社が被った損害の金額を就業規則に記載することにより、少なくとも何らかの懲戒処分を行うことが可能にしておく必要がある。

ちなみに、実務では就業規則に記載する即時解雇が可能な著しい職務怠慢行為により会社が被る重大な損害額は5000元以上であることが多い。もっとも、著しい職務怠慢行為であるかについては慎重に判断する必要がある。

また、虚偽の事実を申告し、会社に過大な費用請求を行う事例(例えば、誰と何のために行ったのか明確に証明できない接待交際費)が多発している。

社内ルールが曖昧であったり、監督・審査の手続きがない場合は、仮に過大な費用請求が後に発覚した場合であっても、業務上の必要性・費用金額の合理性から裁判所が過大な費用請求を不正行為と認定しないことがある。

社内ルール、内部統制手続きを整備しないといざという時に不正行為を理由に厳しい処罰をすることができなくなる。

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この記事の監修者:向井蘭弁護士


護士 向井蘭(むかい らん)

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)

【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数

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