現場の説得

現場の説得

ストライキが起こっている現場での説得はとても重要である。以下の点について注意が必要である

(1) 経営陣、政府部門及び弁護士立会で行う

説明内容も重要であるが、経営陣、政府部門及び弁護士が一体となっている事実を示し、場合によっては断固たる措置を取ることも辞さない姿勢を示すためにも経営陣、政府部門及び弁護士が立会のもと説明を行う必要がある。

政府部門が立ち会わない場合は警備員を必ず立ち会わせる必要がある。ストライキの首謀者が説明を力ずくで妨害しようとしてくることがあるためである。

ストライキリーダー、首謀者も暴力や暴言を吐けば、その後解雇されることが分かっているため、意外と大人しくしていることが多い。現場の説得内容・状況は全て録画・録音しておく必要がある。

(2) 説明内容

経営陣は、ストライキの影響で会社が厳しい状況に置かれること、その結果従業員の労働条件にも影響が及び労使ともに損失を被ること、合理的な解決案を提示する用意があることを説明する。

政府部門の担当者は、人によって話す内容はまちまちであるが、ストライキを政府は認めていないこと、政府も労使の話し合いによって解決させる努力をすることを説明することが多い。

弁護士は、現行法ではストライキは認められておらず、ストライキが長引けば場合によっては、労働契約法第39条第2項における規則制度の重大違反によって、従業員を解雇することも可能であることを説明する。

解雇の説明については反発を受けることが多いが、従業員の心理に少しずつ影響が出てくるので正面から説明したほうが良い。

(3) 説得が不調に終わってもよい

説得を行っても、従業員が反発するなどして説得が不調に終わることが多い。しかし、説得が不調に終わったとしても、折を見て何度も説得を続けるべきである。目的は二つある。

一つ目は、説得を続けることによって、現場の従業員が聞いていた情報と経営者が伝えていた情報が異なることに気づいてもらうことである。
例えば、ストライキの首謀者が「会社は儲かっているのに従業員の賃上げをしない」と伝えている場合、経営者側が繰り返し「社会保険料負担の増大から今期から利益はほとんど出なくなり、来期は赤字になる見通しである」と伝えることは一部の従業員の態度を変える効果がある。

二つ目は、説得を続けることによって、従業員の反応を肌で感じ、会社に理解を示す従業員を探すことができる。現場の説得を続けていると、あるベテラン従業員達が何とも言えない困惑した表情を浮かべていることがある。

彼らは、言われて仕方がなく参加しているだけで、本来はストライキを起こすつもりはないことが多い。この場合、中国人従業員の別のルートを通じて、生産再開に向けてベテラン従業員を説得することが可能になる。

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この記事の監修者:向井蘭弁護士


護士 向井蘭(むかい らん)

杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)

【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数

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