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ひとたび、労使トラブルがおき、裁判になれば、裁判所は就業規則を非常に重視します。
杓子定規といえるくらい、就業規則の文言にしたがった判断をくだすこともあります。
にもかかわらず、多くの企業は、同業他社や雛形の就業規則を書き写したものを使用しています。
私のように、日々労務問題に取り組んでいる立場から見ると、トラブルになった際に、全く役に立たない、穴だらけの就業規則が多いのです。
従業員にとって厳しい、性悪説的な就業規則を提示することに心理的な抵抗を感じる経営者、労務担当者もおられると思いますが、平常時の対応は性善説で、しかしトラブルが起こった時のために、就業規則は性悪説で作成されることをお勧めします。
「始末書を提出させた上で、懲戒処分に処する」との規定をよく見かけます。
従業員が自らの非違行為を認めるのであれば、この規定でも問題ありません。
しかし、従業員が自らの非違行為を認めず、始末書の提出を拒否した場合、(文言通り解釈すると)懲戒処分を行えなくなってしまいます。
懲戒処分を行う上で始末書の提出は不要です。従業員の言い分は企業が聴取すればよく、始末書をとる必要はありません。
懲戒処分を行うには懲戒事由を定めた就業規則の規定が必要です。
そのため、懲戒事由にあたりそうな具体的な事由はあらかじめ明記しておきましょう。
また、「その他、前記各号に準ずる行為があった場合」も懲戒処分に処するという規定も入れておきましょう。
就業規則の休職規定は、業務外の傷病による欠勤が一定期間経過した後、一定期間の休職を命じることがあると定めることが多いと思われます。
問題は、その期間です。大企業ならともかく、中小企業は欠勤については1ヶ月、休職期間については6ヶ月程度を限度にしてください(勤続年数で期間の長短を決めることはかまいません)。
うつ病などで体調を崩す従業員が多い中、企業は休職期間中も社会保険料を負担するのですから、企業の体力に応じて休職期間は定めてください。
また、欠勤期間中の給与はともかく、休職期間中の給与も無給にしてください。
ただし、具体的妥当性をはかるため、事情により基本給の6割を支給するなどの規定を定めた方が無難でしょう。
復職させるか否かの際もトラブルが起きやすいので、休職期間満了時に復職させるか否かを判断するために、会社が会社の指定する医師の診察を命じることが出来るとの規定をおいてください。
ほとんどの就業規則にも試用期間の定めがあると思います。
法的には、試用期間中は本採用後に比べると解雇が容易になっています(あくまでも比較的に容易なだけで無制約ではありません)。
採用後に、はじめて新入社員の様々な問題点が明らかになることがあります。
試用期間を長めにとることも有効ではないかと思います。3ヶ月間の定めが最も多いかもしれませんが、6ヶ月程度期間をおいてもかまいません。
また、以下の点についても確認してみてください。
・定年がない、定年年齢が異なっている
・始業時刻、終業時刻、休日が実態と異なっている
・退職金、有給日数など、パート従業員について適用を除外すべき就業規則をそのまま適用している
・欠勤したとき、遅刻したときの賃金の取り扱いが不明確である
・懲戒解雇をしたときは退職金を不支給とすることができるとの規定がない
いずれも裁判所などでは、実態はどうあれ、就業規則がそのまま適用されてしまい、不都合な結論が出ることがあります(パート従業員に何百万円の退職金を支払わざるをえなくなってしまう等)。
就業規則は、労務トラブルの予防、またトラブルが起こった際、会社を守る盾になり得ます。自社の状況にあった、就業規則を整備されることを強くお勧めします。
使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
まずはお気軽にお電話やメールでご相談ください。
この記事の監修者:向井蘭弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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