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会社が従業員に対して注意指導をしたところ、その後に次のようなやり取りがあったとします。
従業員:「そんなことで注意されるならもう私はもうここではやっていけません。」
会社:「そうですか。やっていけないなら仕方がないですね。荷物をまとめてください。」
従業員:「わかりました。」
会社:「ロッカーの鍵と制服は置いて帰ってくださいね。」
従業員:「はい。(周りの従業員に対して)これまでお世話になりました。」
話の流れとしては、退職方向で話が進んだように見えます。ただこのような事案であっても、後になって「あのときは流れの中でそう言わざるを得なかった」、「会社から荷物をまとめろと言われたので解雇だと思った」など退職の効力が争われることがあります。
今回ご紹介するE事件(東京地裁令和5年3月28日判決・労経速2538号29頁)も、会社が従業員に対し客先での勤務態度(搬送先のガードマンに暴言を吐く)に関して問い質した際に、従業員が「もう勤まらない。」と言い、それに対して会社代表者が「勤まらないのであれば、私物を片付けて。」と返答したと主張し(発言の有無自体に争いあり)、その後従業員が、貸与された携帯電話及び健康保険証を置いて事務所を立ち去り、翌日以降出勤しなかったという事案において、辞職又は退職合意申込の意思表示があったといえるかが争点になりました。
裁判所は「発言をするに至った経緯を前提としても、原告が被告における就労意思を喪失したことを窺わせる事情は見当たらず、本件発言は、被告代表者から昭和女子大の案件について問い質されたことに憤慨した原告が、自暴自棄になって発言したものとみるのが自然であり、これを辞職又は退職の意思をもって発言したものとみるのは困難である。」「健康保険証等を置いて被告の事務所を去り、翌日から出勤しなかったとする点も、被告代表者の「勤まらないのであれば、私物を片付けて。」との返答を受けての行動であって、かかる発言は、社会通念上、原告の退職を求める発言とみるのが自然であることからすると、これを解雇と捉えた原告がとった行動とみて何ら不自然ではなく、その約3週間後である令和4年1月15日に、原告が被告に対し解雇予告手当の支払などを求める書面を被告に送付していることもこれを裏付けるものといえる。」「そうすると、被告主張の事実から原告が辞職又は退職合意申込みの意思表示をしたということはできない。」と判断しました。
そもそもこの事案では発言の有無自体が争われていて、裁判所は仮にそのような発言があったとしても、自暴自棄になって発言したものであり、辞職の意思は無いと認定しています。この点については違和感があります。自暴自棄であろうがなかろうが、簡単に「辞める」というような発言はすべきではないですし、「辞める」と発言した以上はその発言に責任を持つべきだと思います。
このような事案では、仮に会話内容の録音データが残っていたとしても、自暴自棄で発言したものであると言われてしまうと意味がありません。やはり辞めると言うならば、その場で冷静な気持ちで退職届を書いてもらい、退職の意思を記録化しておくことが重要です。
使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
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この記事の監修者:岸田 鑑彦弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 岸田鑑彦(きしだ あきひこ)
【プロフィール】
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。平成21年弁護士登録。訴訟、労働審判、労働委員会等あらゆる労働事件の使用者側の代理を務めるとともに、労働組合対応として数多くの団体交渉に立ち会う。企業人事担当者向け、社会保険労務士向けの研修講師を多数務めるほか、「ビジネスガイド」(日本法令)、「先見労務管理」(労働調査会)、労働新聞社など数多くの労働関連紙誌に寄稿。
【著書】
「労務トラブルの初動対応と解決のテクニック」(日本法令)
「事例で学ぶパワハラ防止・対応の実務解説とQ&A」(共著)(労働新聞社)
「労働時間・休日・休暇 (実務Q&Aシリーズ) 」(共著)(労務行政)
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