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目次
休職から復職する状況によっては、主治医が就労可能と判断しても、会社として「まだ就労可能とはいえないのではないか」など納得できない場合があります。
その場合、本人同席のもと、主治医面談を行うことがあるのですが、本人が合理的な理由無く主治医面談に協力しないことがあります。
このような場合、主治医の診断書を受理しない(もしくは信用性が無いものとして扱う)ことができるか、判断に悩むことがあります。
今回は、この点について判断したN組合事件(東京地裁令和2年8月27日判決)をご紹介致します。
原告は、平成25年に被告(平成25年当時は別の名称)との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、総合職として勤務していましたが、平成28年7月上旬から、統合失調症の影響(幻覚や幻聴等)で就労ができない状態になりました(その後、保護入院)。
原告は、有給休暇と積立特別休暇を消化した後、平成28年8月29日から私傷病による傷病休暇を取得しました。
平成29年2月28日で傷病休暇の期限が満了したので、被告は同年3月1日に休職を命じました。
休職期間中、原告は幻覚や幻聴を元にしたものと思われる内容をインターネットに書き込み続けました。
被告の就業規則には、職員の傷病休職について、以下の定めがありました。
① 傷病休暇が終了した時は、所定の期間の範囲内において、休職を命じる
② 休職期間満了までに休職事由が消滅した時は復職を命じ、休職期間が満了しても、なお休職事由が消滅しないときは、その日を退職日として職員としての身分を失う
③ 職員が復職を求める際に提出する主治医の治癒証明(診断書)について、被告が主治医に対する面談の上での事情聴取を求めた場合には、職員は、医師宛ての医療情報開示同意書を提出するほか、その実現に協力しなければならず、職員が正当な理由なくこれを拒絶した場合には、当該診断書を受理しない(平成30年6月5日付けの就業規則の改正により新設された)
平成30年6月12日、原告は被告に対し、主治医が作成した同年6月7日付の診断書を提出して復職の申出を行いました。
被告は、同年7月13日、原告に被告の指定医の診察を受けさせた上、同年7月24日、原告の本件復職申出を認めないとの判断を伝えました。
なお、原告はこれを不服に思い、インターネットに攻撃的かつ被害妄想にもとづく書き込みを続けました。
これによって、原告の休暇期間が1年6か月を超えることになり、就業規則上無給になったため、同年8月22日、原告は被告に対して復職不許可が違法無効であると主張して賃金仮払仮処分命令を申し立てた上(その後却下決定)、9月7日、本件復職不許可後の8月分以降の賃金の支払いを求める訴え(本件訴訟)を提起しました。
原告は、令和元年7月23日、同年6月7日付の新たな主治医(同じ病院の中で交代)の診断書を提出し、再度復職の申出をしました。
被告は、令和元年9月19日、原告が被告と新たな診断書を作成した医師との面談を「同じ病院の中で引き継ぎが行われているので不要である」などとして拒否したため、就業規則に基づき新たな診断書を不受理とし、その結果、休職期間の満了時において、休職事由の消滅が認められないことから、被告は同日、本件就業規則に基づき原告を退職扱い(自然退職)としました。
これに対し、原告は、本件自然退職は無効であると主張し、すでに係属中の本件訴訟において、雇用契約上の権利有する地位にあることの確認請求を追加する旨の訴えの変更を行いました。
・原告が提出した令和元年6月7日付診断書(主治医が「原告の復職に明らかに支障をきたす著明な症状はみられない」という結論のみ記載)について、「被告が主治医に対する面談の上での事情聴取を求めた場合には、職員はその実現に協力しなければならず、職員が正当な理由なくこれを拒絶した場合には当該診断書を受理しない」旨の就業規則の定めの新設は、合理的なものであり、就業規則の改正前から休職していた原告にも適用される
・主治医の診断書の記載が結論のみ記載されていたこと、原告には病状の悪化がうかがわれる症状があり、かつインターネットに攻撃的かつ被害妄想にもとづいたと思われる書き込みがなされていること、前主治医の診断書から1年以上経過していることから、被告が主治医との面談を求める合理的な理由がある
・一方、原告が主治医との面談や事情聴取に対する協力を拒んだことについて正当な理由はなかったとして、被告が当該診断書を受理しなかったことは正当であると判断しました。
会社が産業医経由で主治医宛に診療情報提供依頼書などを出し、主治医が書面で回答することが多いと思いますが、書面では文字の制限があり、微妙なニュアンスや繊細な情報を得ることができません。
そのため、判断に迷う場合や背景事情がありそうな場合は主治医面談が必要となります。
実際に主治医と面談すると色々な事が分かることがあります。
もっとも、主治医は本人が同意してかつ同席しないと面談に応じませんので、本人の協力が必要になります。
今回の判決によれば、就業規則に「会社が主治医に対する面談の上での事情聴取を求めた場合には,従業員は,医師宛ての医療情報開示同意書を提出するほか,その実現に協力しなければならず,従業員が正当な理由なくこれを拒絶した場合には,当該診断書を受理しない」旨の規定を設けることは実務上有効である場合が多いように思われます。
ただし、主治医との面談に協力しない合理的な理由があれば(例えば直近でも同様の主治医面談を実施したばかり等)、不受理扱いは無効となると思われるのでその点は注意が必要です。
使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
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この記事の監修者:向井蘭弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 向井蘭(むかい らん)
【プロフィール】
弁護士。
1997年東北大学法学部卒業、2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
同年、狩野祐光法律事務所(現杜若経営法律事務所)に入所。
経営法曹会議会員。
労働法務を専門とし使用者側の労働事件を主に取り扱う事務所に所属。
これまで、過労死訴訟、解雇訴訟、石綿じん肺訴訟。賃金削減(就業規則不利益変更無効)事件、男女差別訴訟、団体交渉拒否・不誠実団体交渉救済申立事件、昇格差別事件(組合間差別)など、主に労働組合対応が必要とされる労働事件に関与。近年、企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務める他、労働関連誌への執筆も多数
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