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今回ご紹介するN事件(東京高裁令和5年11月30日判決/東京地裁令和5年5月19日判決・労経速2543号)は、退職後1年間の競業避止義務の有効性、また競業避止義務違反を理由とした退職金の一部不支給の有効性等が争われた事案です(退職金不支給の点は省略します)。
結論として、裁判所は業種の特殊性(投資グループの投資職)から競業避止の必要性があること、期間も1年間で不相当ではないこと、競業の範囲についても制限が不相当に広いとまではいえないこと等を理由に競業避止条項を有効と判断しています。
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目次
競業避止義務については、労働者の職業選択の自由を制限するものであるため、無制限に認められるものではなく、この裁判例でも指摘しているとおり「その目的、在職中の職位、職務内容、転職が禁止される範囲、代償措置の有無等に照らし、転職を禁止することに合理性があると認められないときは、公序良俗に反するものとして無効」となります。
しかしこの事案では、投資グループが、各チームで投資検討先の情報等を入手し、その分析や提案資料の作成等を行い、ノウハウを用いてカーブアウト投資等のバイアウト投資事業を行っていることから、このようなノウハウ、情報及び経験を有する従業員が、退職後直ちに競業他社に転職等した場合、会社はそれによって不利益を受け得ると考えられるから、これを防ぐことを目的として、少なくとも投資職の従業員に対して競業避止義務を課すことには合理性がある、と判断しています。
このように個人の能力というよりも、会社としてのノウハウが重要な業種であるため、競業避止義務を課す必要性が高かったといえます。
競業禁止の範囲についても「競合若しくは類似業種と判断する会社・組合・団体等への転職を行わないこと」とあり文言上は必ずしも明確であるとはいえないものの、会社は競合の範囲をバイアウトファンドのプライベートエクイティ(を事業とする会社)と説明していたことから、範囲が不相当に広く、また無効にするほど不明確ではないと判断しました。
このように競業避止の範囲が文言上不明確であると、競業避止条項が無効と判断されやすいため、明確にしておくべきです。
この事案では、競業避止義務を負う期間を退職後1年間としており、競業避止の目的からすると不相当であるとはいえないと判断しています。
どの程度の期間であればOKという客観的な基準があるわけではないですが、業務内容や競業避止の目的との関係で判断されることになります。
なおこの事案では、業務の性質上(投資職)、エリア限定があまり意味をなさないため、競業避止のエリアについては議論になっていませんが、商圏が被らなければ競業に転職しても不利益を受けない業種の場合には、エリア限定をした方が競業避止条項の有効性が認められやすいでしょう。
競業避止条項が有効になるためには代償措置が必須であり、これを欠くと無効になる可能性が高いということがよく言われています。
この事案でも代償措置について裁判所は「被告が原告に年平均1200万円を超える相当額の基本年俸及び業績年俸を支払った点は考慮できるものの、原告の賃金が同業種の中で特に高額であると認めるに足りる的確な証拠はなく、原告が被告から得た経済的利益が代償措置として十分であるとまでは直ちにいえない。」と指摘しています。
しかし、競業避止義務を課すことに合理性があり、競業避止条項が不明確であるといえず、期間も不相当に長いといえないことをも考慮すれば、代償措置として十分であるとまでは直ちにいえないとしても、原告が競業避止義務を負うことが不合理であるとまではいえないと判断しています。
対象従業員は、退職時に、会社が用意した競業避止条項を含む合意書に署名・押印しませんでした。
競業会社に転職することや、独立することが決まっているような場合には、このような合意書や誓約書にサインしないことが多々あります。
ただこの事案では、入社時の労働契約書において「退職後の転職等に係る原告の誓約事項」として、かかる競業避止条項が記載されていました。
また、対象従業員以外の者で競業に転職した者がいたことについて全体会議で注意喚起をしたり、研修資料等において競業避止義務等について説明していたりしたことも認定されています。
このように退職後の競業避止が重要な業種については、雇用契約書の段階で競業避止や秘密保持に関する誓約を入れたり、定期的にコンプライアンス研修などで競業避止や秘密保持に関する事項についても取り上げるなどして、会社としてその点についての重要視していることを伝えた方が競業避止条項の有効性との観点でも望ましいといえます。
使用者側の労務トラブルに取り組んで40年以上。700社以上の顧問先を持ち、数多くの解決実績を持つ法律事務所です。労務問題に関する講演は年間150件を超え、問題社員対応、残業代請求、団体交渉、労働組合対策、ハラスメントなど企業の労務問題に広く対応しております。
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この記事の監修者:岸田 鑑彦弁護士
杜若経営法律事務所 弁護士
弁護士 岸田鑑彦(きしだ あきひこ)
【プロフィール】
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。平成21年弁護士登録。訴訟、労働審判、労働委員会等あらゆる労働事件の使用者側の代理を務めるとともに、労働組合対応として数多くの団体交渉に立ち会う。企業人事担当者向け、社会保険労務士向けの研修講師を多数務めるほか、「ビジネスガイド」(日本法令)、「先見労務管理」(労働調査会)、労働新聞社など数多くの労働関連紙誌に寄稿。
【著書】
「労務トラブルの初動対応と解決のテクニック」(日本法令)
「事例で学ぶパワハラ防止・対応の実務解説とQ&A」(共著)(労働新聞社)
「労働時間・休日・休暇 (実務Q&Aシリーズ) 」(共著)(労務行政)
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